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断熱リノベーション 2|UA値が良ければ暖かい家?断熱性能の数字を解説

  • 3 時間前
  • 読了時間: 9分

壁天井の断熱材充填の様子
壁天井の断熱材施工の様子

住宅の断熱について調べていると、「UA値(ユーエー値)」という言葉を目にすることがあります。

「UA値0.6」 「UA値が小さいほど高性能」 「断熱等級○○」

数字を比較することはできても、

「そもそも何を表している数字なのか」 「UA値が良ければ、本当に暖かい家になるのか」

までは分かりにくいのではないでしょうか。

UA値は、住宅の断熱性能を客観的に確認するための大切な指標です。

ただし、UA値だけで、その家の暖かさや快適さのすべてが分かるわけではありません。

特に既存住宅のリノベーションでは、数字だけを見るのではなく、「実際にどこが寒いのか」「断熱材はどのような状態なのか」「今回の工事でどこまで手を入れるのか」まで考えることが大切です。

今回は、UA値の基本的な意味と、リノベーションではどのように断熱性能を考えているのかをご紹介します。


UA値とは「家全体から熱がどのくらい逃げやすいか」を見る数字


UA値の正式名称は「外皮平均熱貫流率」です。

少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、

「住宅の中と外に温度差があるとき、家全体からどのくらい熱が逃げやすいのか」

を見るための数字です。

住宅では、室内の熱が、

・屋根や天井 ・外壁 ・床 ・窓や玄関ドアなどの開口部

を通して外へ移動します。

UA値は、それぞれの場所から逃げる熱と面積などを考慮し、住宅全体の平均として表します。

基本的には、

UA値が小さい = 熱が逃げにくいUA値が大きい = 熱が逃げやすい

と考えると分かりやすいでしょう。

細かな計算方法まで覚える必要はありません。

「家全体の断熱性能を見るための物差し」

くらいに考えておけば十分です。


「U値」と「UA値」は何が違う?


UA値と似た言葉に「U値(熱貫流率)」があります。

U値は、壁や床、窓など、それぞれの部分について熱の伝わりやすさを見る数字です。

例えば、

「この窓のU値」 「この外壁のU値」

という使い方をします。

こちらも、数字が小さいほど熱を伝えにくいことを表します。

簡単に整理すると、

U値 = 壁や窓など、それぞれの部分を見る数字 UA値 = 家全体を見る数字

という違いです。


断熱材は「入っているか」だけでは分からない


既存住宅のリノベーションでは、図面だけでは断熱材の状態が分からないことがあります。

実際に私たちが住宅を解体して確認すると、床には断熱材が入っていないケースを比較的多く見かけます。

壁については、断熱材がまったく入っていない住宅はそれほど多くありません。

一方、天井は断熱材が入っている住宅もあれば、入っていない住宅もあります。 さらに、断熱材が入っていても、その状態は住宅によってさまざまです。

例えば、雨漏りしている場所では、断熱材がずれていることがあります。

ただし、

「古い家だから断熱材は全部ずり落ちている」

というわけでもありません。

築年数が経っていても、きちんとした状態を保っている住宅も多くあります。

断熱材の状態は築年数だけでは判断できません。

既存住宅では、実際の建物を確認することが大切です。


解体する場所なら、断熱改修の費用対効果が高くなる


リノベーションでは、耐震補強、設備の入れ替え、間取り変更などによって、床や壁、天井を一度解体することがあります。

私たちは、このように別の工事で解体する場所については、できるだけ断熱材も見直すことをおすすめしています。

理由は、一度仕上げを撤去しているためです。

完成している壁や床を、断熱工事だけのために改めて壊す場合には、

解体する 断熱材を施工する 下地を復旧する 内装を仕上げる

という工事が必要になります。

しかし、間取り変更や耐震補強、設備の入れ替えなどで、もともと解体する予定の場所なら、断熱工事だけのために解体する必要がありません。

そのため、同じ断熱工事でも費用対効果が変わってきます。

既存住宅では、

「全部を一度に断熱するか」

だけではなく、

「今回のリノベーションで、どこまで解体するのか」


を見ることも重要です。


断熱リノベーションでは、どこから優先する?


すべての床、壁、天井、窓を一度に改修できれば、住宅全体の断熱性能を高めやすくなります。

しかし、それだけ工事費も大きくなります。

そこで私たちは、住まいの状況を見ながら優先順位を考えています。

その中でも、まず優先して考えたいのが浴室と脱衣室です。

リビングや寝室であれば、冬は着る物を増やすことで寒さに対応することもできます。

一方、入浴時は衣服を脱ぐため、寒い浴室や脱衣室の温度環境には特に注意したいところです。

ユニットバスを入れ替えるタイミングであれば、浴室まわりの壁や、脱衣室の壁・天井・床なども一緒に確認します。

設備を新しくするだけでなく、せっかく解体するのであれば、その機会に断熱性能も改善する。

リノベーションでは、こうした工事の組み合わせが費用対効果につながります。


次に考えたいのが「窓」


浴室や脱衣室の次に、優先順位が高いと考えているのが窓です。

窓は、住宅の中でも熱が移動しやすい部分のひとつです。

ただし、すべての窓を同じ方法で改修する必要はありません。

例えば、出入りのためによく開閉する場所では、既存のサッシそのものを入れ替える方法があります。

一方、開閉頻度の少ない窓であれば、既存窓の内側にもう一つ窓を設置する内窓も選択肢になります。

「窓だから全部交換する」のではなく、使い方によって工事方法を変える。

そうすることで、限られた予算の中でも、使う場所にメリハリをつけることができます。


天井と床は、今の状態によって優先順位が変わる


次に確認したいのが、断熱材が入っていない場所です。

特に天井と床は、既存住宅で確認したいポイントです。

天井の場合、天井裏に入ることができれば、室内の天井を壊さずに断熱材を施工できる場合があります。

比較的工事費を抑えながら断熱性能を改善しやすく、夏の暑さ対策としても費用対効果の高い工事です。

一方、床断熱は冬の底冷え対策として有効です。

ただし、既存床を剥がして施工する場合などは天井より工事が大きくなり、費用もかかりやすくなります。

そのため、

「冬になると、とにかく足元が寒い」

という方であれば床の優先順位を上げるなど、現在困っていることによって判断を変えます。

同じ住宅でも、夏の暑さに困っている人と、冬の底冷えに困っている人では、優先して工事する場所が変わることがあります。


UA値0.6以下でも、すべて同じ断熱仕様とは限らない


あすなろ設計事務所のリノベーション展示場では、断熱改修後のUA値を計算し、0.6以下となるよう施工しています。

ただし、床・壁・天井・窓など、すべての場所を同じ断熱仕様にしたわけではありません。

既存住宅では、今ある建物を活かしながら改修するため、場所によって必要な性能や工事方法を変えることがあります。

それぞれの部位の性能を確認しながら、住宅全体としてUA値0.6以下を確保しました。

ここで大切なのは、UA値が「住宅全体の平均値」だということです。

例えば、家全体としてUA値が良くても、床の断熱性能が低ければ足元の寒さを感じることがあります。

窓の性能が弱い場所があれば、その窓際では冷たさを感じやすくなります。

つまり、

「UA値が良いから、家のすべての場所が同じように快適」

とは限りません。

UA値は大切な数字ですが、「その家のどこが弱いのか」までは数字ひとつでは分からないのです。


すべてのリノベーションでUA値を計算する必要はある?


あすなろ設計事務所では、すべてのリノベーション案件でUA値を計算する必要があるとは考えていません。

家全体の断熱性能を大きく改善する工事であれば、改修後の性能を確認するためにUA値を計算する意味があります。

一方で、

「浴室と脱衣室を断熱したい」 「窓を改善したい」 「天井に断熱材を追加したい」

といった部分的な改修では、住宅全体のUA値を計算することよりも、その場所にどのような断熱工事を行うかの方が重要な場合もあります。

数字を出すこと自体が目的ではありません。

今の住宅で困っていることに対して、どこを改善すれば効果的なのか。

そこから工事内容を考えていきます。


UA値だけでは分からないこともある


UA値は、住宅の断熱性能を見るための重要な指標ですが、住宅の快適性のすべてを表しているわけではありません。

例えば、UA値には換気によって外へ逃げる熱は含まれていません。

また、夏の暑さを考えるときには、断熱性能だけでなく、窓から入ってくる日射も重要になります。

同じ断熱性能の住宅でも、

南や西側の大きな窓から強い日射が入る家と、周囲の建物や庇などによって日射が抑えられている家では、夏の室内環境は変わります。

そのため、夏の暑さを考えるときには、

・窓の位置 ・方角 ・窓の大きさ ・庇や外付けシェード ・周囲の建物 ・日射の入り方

なども確認する必要があります。

住宅の快適性は、UA値だけでは決まりません。

断熱性能に加えて、その土地や建物にどのように日射が入るのかまで考えることが大切です。


UA値は「目的」ではなく、住まいを考えるための物差し


UA値は、住宅の断熱性能を客観的に確認するために、とても役立つ数字です。

しかし、リノベーションで本当に考えたいのは、

「UA値をいくつにするか」

だけではありません。

「お風呂や脱衣室の寒さを改善したい」 「窓際の冷たさを減らしたい」 「夏の2階の暑さを何とかしたい」 「冬の床の底冷えを改善したい」

こうした現在の困りごとを確認し、その住宅の状態を見ながら、どこに予算を使うのかを決めていく。

・すでに解体する場所なら断熱材を入れ替える。

・出入りする窓ならサッシの交換を検討する。

・あまり開けない窓なら内窓を検討する。

・夏の暑さが問題なら天井断熱を優先する。

・冬の底冷えが強ければ床断熱の優先順位を上げる。

あすなろ設計事務所では、家全体の数字だけを追いかけるのではなく、暮らしの中で困っていることと、工事にかけられる予算のバランスを見ながら、必要な断熱改修を考えています。

次回は、「断熱リノベーションは、家全体をやらなければ意味がないのか?」

という疑問について、家全体を改修する方法、生活する範囲を中心に改修する方法、窓や床などを優先する方法の違いをご紹介します。



次回はこちら

「断熱リノベーション3|家全体が必要?部分断熱と改修範囲の考え方」



参考資料

・国土交通省「断熱性能|ラベル項目の解説」国土交通省公式ページ

・国土交通省「住宅省エネポータル」住宅の外皮性能、断熱材、窓、日射など住宅の省エネルギー性能に関する資料が公開されています。住宅省エネポータル

・国土交通省「住宅における外皮性能」UA値など住宅の外皮性能について解説されています。国土交通省公式資料

・国土交通省「部分断熱改修に向けた取組」

既存住宅の部分的な断熱改修について、実証事例などがまとめられています。

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