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断熱リノベーション 1|省エネだけじゃない、冬の寒い家と健康・快適性の関係

  • 5 時間前
  • 読了時間: 7分

サッシ入替と断熱材充填の様子
断熱材充填の様子

冬になると、

「暖房をつけているのに足元が寒い」

「リビングから廊下に出ると急に寒くなる」

「朝起きると部屋が冷え切っている」


そんな住まいの寒さに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。


住宅の「断熱」というと、光熱費を抑えるためのものと思われることがあります。

もちろん、省エネルギーは断熱の大きなメリットのひとつです。


しかし、断熱にはもうひとつ大切な役割があります。

それは、家の中の温度環境を整え、冬をより快適に暮らせる住まいにすることです。


さらに近年では、住宅内の寒さや温度差と、血圧などの健康指標との関係についても調査が進められています。


この記事では、「なぜ断熱すると暖かく感じるのか」「家の寒さと健康にはどのような関係があるのか」を、リノベーションの現場で感じることも交えながらご紹介します。


同じ室温20℃でも、寒く感じる家がある


暖房をつけて室温を20℃にしているのに、なぜか寒い。

その原因のひとつが、床・壁・窓などの表面温度です。

人が感じる暖かさは、室内の空気の温度だけで決まるわけではありません。

例えば、室温が十分に上がっていても、床や壁、窓の表面が冷えていると、体から周囲へ熱が奪われやすくなります。

そのため、

「エアコンをつけているのに足元が寒い」 「窓の近くに行くとひんやりする」

と感じることがあります。

反対に、断熱性能を高めて床や壁、窓などの表面温度が下がりにくくなれば、同じ室温でも感じる暖かさは変わってきます。

暖房の設定温度を上げることだけが、寒さを解決する方法ではないのです。


「暖房をかけているのに寒い」という相談


実際のリノベーションでも、

「暖房をかけているのに寒いです」

というご相談をいただくことがあります。

これまでの住宅を調査した中では、床の断熱性能が不足していることが、寒さの大きな原因になっていたケースもありました。

こうした場合には、一度床を剥がして、その下に断熱材を施工する方法をご提案します。

実際に、この方法を選ばれる方は多くいらっしゃいます。

一方で、床を剥がして断熱工事まで行うと、その分工事費もかかります。

そこで予算とのバランスから、既存の床の上に杉の無垢材を張る方法を選ばれる方もいます。

杉は比較的熱を伝えにくく、足に触れたときの冷たさも感じにくい材料です。

もちろん、本格的に床下へ断熱材を施工する方法と同じ断熱効果が得られるわけではありません。

それでも、

「どこまで性能を高めたいのか」 「そこにどのくらい予算をかけるのか」

によって、選択肢は変わります。

断熱リノベーションでは、こうした判断もとても大切です。


家の中の「温度差」にも注意


冬の住宅でもうひとつ考えたいのが、家の中の温度差です。

例えば、暖房をつけているリビングは暖かくても、廊下に出ると寒く、脱衣室やトイレはさらに冷えている。

築年数の経った住宅では、このようなことが珍しくありません。

全国規模で行われた住宅と健康に関する調査では、

・部屋間の温度差が大きい住宅 ・床付近の室温が低い住宅

では、居住者の血圧が有意に高いことなどが報告されています。

また、断熱改修後には、居住者の起床時の最高血圧が有意に低下したことも報告されています。

ここで注意したいのは、

「断熱すれば病気にならない」 「断熱すれば血圧が必ず下がる」

という意味ではないことです。

健康には年齢や生活習慣、食事、運動など、さまざまな要因が関係します。

ただ、寒い室内環境と血圧などの健康指標との関連が調査で示されており、住まいの温度環境を整えることは、健康面から考えても大切な要素のひとつといえます。


WHOが示す「冬の室温18℃」という考え方


住宅の寒さについては、世界保健機関(WHO)もガイドラインを公表しています。

WHOが2018年に公表した「WHO Housing and health guidelines」では、温暖または寒冷な気候の地域において、寒い季節に一般の人々の健康を守るための、安全でバランスの取れた室温として18℃が提案されています。

また、高齢者や子ども、慢性疾患のある方などでは、一般の人より高い最低室温が必要になる場合があるとしています。

ただし、この18℃という数字も、

「18℃を超えれば安心」 「17℃なら危険」

という明確な境界線ではありません。

大切なのは、数字だけにとらわれるのではなく、冬の家の中を極端に寒い状態にしないことです。

リビングだけではなく、寝室、廊下、脱衣室、トイレなども含めて、家の中の温度環境を考えることが大切です。


断熱材は「熱をつくるもの」ではない


断熱性能を高めると、

「暖房なしでも暖かくなる」

と思われることがあります。

しかし、断熱材そのものが熱をつくっているわけではありません。

断熱の役割は、室内の暖かさを外へ逃げにくくすることです。

暖房で室内を暖めても、壁・床・天井・窓などから次々に熱が外へ逃げてしまえば、なかなか暖まりません。

反対に、熱が逃げにくい住まいであれば、暖房が効きやすくなり、床や壁などの表面温度も下がりにくくなります。

その結果、

「暖房しているのに足元が寒い」 「窓際だけひんやりする」 「暖房を切るとすぐ寒くなる」

といった不快感を減らしやすくなります。

つまり、断熱の目的は単に暖房費を安くすることではなく、少ないエネルギーでも快適な室内環境を保ちやすい住まいにすることでもあります。


断熱リノベーションでは、家全体を一度に断熱するとは限らない


では、断熱リノベーションをするなら、床も壁も天井も窓も、すべて改修しなければ意味がないのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

実際にあすなろ設計事務所でも、家全体ではなく、1階やLDK、水回りなど、生活の中心となる範囲を重点的に断熱するケースは多くあります。

その大きな理由がコストです。

既存住宅で床・壁・天井・窓まで全面的に手を入れると、工事範囲はかなり大きくなります。

建物の状態によっては、断熱だけでなく、それに伴う内装や設備、下地などの工事も必要になり、結果として新築に近い費用規模になることもあります。

そこで、

「家全体を最高性能にする」

ことだけを目標にするのではなく、

「これから長く過ごす1階を暖かくする」 「LDKと水回りの寒さを改善する」 「寝室やリビングなど、長く過ごす場所を優先する」

という考え方をすることがあります。

断熱にすべての予算を使うのではなく、必要なところに必要な性能を確保し、残った予算を暮らしの別の部分に使う。

そうしたバランスを選ばれる方は少なくありません。


高性能にすることだけが正解ではない


断熱性能には、UA値や断熱等性能等級など、さまざまな指標があります。

もちろん、住宅の性能を客観的に確認するために、こうした数字は重要です。

ただし、リノベーションでは、数字を高くすること自体が目的になってしまわないようにしたいと考えています。

大切なのは、

「その家で、これからどのように暮らしたいのか」

ということです。

「朝の寒さを何とかしたい」 「足元の冷えを減らしたい」 「脱衣室との温度差を小さくしたい」 「冬の暖房を効きやすくしたい」

こうした現在の困りごとを整理し、建物の状態を確認したうえで、暮らし方や予算に合わせて必要な性能と改修範囲を考えていく。

あすなろ設計事務所では、断熱性能の数字だけを高くするのではなく、限られた予算をどこに使えば、その方の暮らしがより良くなるのかを考えながら断熱リノベーションをご提案しています。

次回は、住宅の断熱性能を調べるとよく目にする「UA値」について、

「UA値とは何なのか」「数字が小さいと何が違うのか」「UA値が良ければ、本当に暖かい家なのか」

を一般の方にも分かるように解説します。





参考資料

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