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断熱リノベーション 3|家全体が必要?部分断熱と改修範囲の考え方

  • 2 時間前
  • 読了時間: 9分

玄関入替の様子
玄関引き戸交換の様子

「断熱リノベーションをするなら、家全体を断熱しないと意味がないのでしょうか?」

断熱について調べていると、高い断熱性能を実現した住宅の事例がたくさん出てきます。

床、壁、天井、窓まで家全体をしっかり断熱できれば、住宅全体の温熱環境を整えやすくなるのは確かです。

ただし、既存住宅のリノベーションでは、それがすべての方にとって最適とは限りません。

家全体を断熱するには、床や壁、天井を解体して復旧する工事も必要になるため、改修範囲が広がるほど費用も大きくなります。

そこで考えたいのが、

「これから家のどこで生活するのか」 「今、どこの寒さや暑さに困っているのか」 「断熱にどこまで予算をかけるのか」

ということです。

既存住宅では、家全体を改修する方法だけではなく、生活する範囲をまとめて断熱したり、窓や水まわりなど優先順位の高い場所から改善したりする方法もあります。

今回は、あすなろ設計事務所で実際に行っている断熱リノベーションをもとに、「どこまで断熱するのか」という考え方をご紹介します。


断熱リノベーションには大きく3つの考え方がある


既存住宅の断熱リノベーションは、大きく分けると次のように考えることができます。

・家全体を断熱する ・生活する範囲をまとめて断熱する ・窓、天井、床など必要な部分を優先して断熱する

家全体を断熱できれば、部屋ごとの温度差を小さくしやすくなります。

一方で、工事範囲が大きくなれば、断熱工事だけでなく内装の復旧なども増えるため、当然コストも上がります。

そこで既存住宅では、

「家全体をどこまで高性能にできるか」

だけではなく、

「これから使う場所に、どこまでお金をかけるか」

を考えることが重要になります。


シニア世代と子育て世代では、必要な断熱範囲も違う


実際のリノベーションでも、家族によって断熱する範囲は変わります。

例えば、シニア世代では、

「2階はほとんど使わなくなった」

という住宅があります。

そうした場合には、あえて2階まで大きな断熱工事をせず、これから生活の中心となる1階に予算をかけることがあります。

一方、子育て世代では、2階の子ども部屋や寝室も日常的に使います。

そのため、1階だけではなく、2階についても窓から断熱性能を改善していくケースが多くなります。

同じ2階建て住宅でも、

「誰が、どの部屋を、これからどのように使うのか」

によって、必要な断熱範囲は変わります。

家全体を一律に考えるのではなく、これからの暮らし方から逆算して考えることが大切です。


1階を断熱するなら、どこから優先する?


あすなろ設計事務所では、既存住宅の1階を中心に断熱する場合、おおむね次の順番で検討しています。

1.窓・玄関 2.水まわり 3.間取り変更や耐震補強で壁を解体する際の断熱 4.天井 5.床

ただし、すべての住宅にこの順番をそのまま当てはめるわけではありません。

冬の底冷えが特に強ければ床の優先順位を上げますし、夏の暑さが大きな悩みであれば天井を優先することもあります。

あくまで、その住宅の状態と暮らしている方の困りごとを見ながら判断していきます。


「全部やらない」という選択も、ひとつの設計判断


中古住宅を購入してリノベーションしたお客様で、

「窓はすべて改修する」 「水まわりもしっかり断熱する」 「床と天井は今回はやらない」

という選択をしたケースがあります。

中古住宅を購入する場合には、建物の工事費だけではなく、土地の購入費も必要です。

そのため、リノベーションに使える予算には限りがありました。

建物を確認すると、床と天井には既存の断熱材が入っていました。

そこで、まだ使える部分まで一度壊して全面的にやり直すのではなく、窓と水まわりを優先することにしました。

これは、

「予算がないから断熱を諦めた」

という話ではありません。

限られた予算の中で、

「どこにお金を使うと暮らしが一番良くなるのか」

を考えた結果です。

断熱性能を高めることだけに予算を使えば、キッチンや収納、間取り、内装など、ほかに改善したかった部分を諦めなければならないこともあります。

住宅性能と暮らしやすさの両方を考えて、予算を配分することもリノベーションでは大切です。


水まわりは「浴室だけ断熱すればよい」ではない


部分的な断熱で特に注意しているのが、水まわりです。

例えばユニットバスを交換するとき、浴室の壁まわりだけ断熱すれば十分とは考えていません。

入浴するときには、

脱衣室で服を脱ぐ 浴室へ入る 再び脱衣室へ戻る

という動きをします。

そのため、浴室だけ暖かくしても、隣の脱衣室が非常に寒ければ、生活する範囲としては十分とはいえません。

あすなろ設計事務所では、浴室の断熱と合わせて、脱衣室についても、

・窓 ・外壁 ・床 ・1階であれば天井

まで確認します。

部分断熱で大切なのは、「断熱材を入れた場所の数」ではありません。

暖かくしたい生活空間を、どの範囲までまとめて考えるのか。

そこが重要です。


玄関も忘れたくない場所


窓と合わせて確認したいのが玄関です。

古い住宅では、冬になると玄関が外気に近いような寒さになることがあります。

玄関は居室ではありませんが、毎日必ず通る場所です。

暖かいLDKから出た瞬間に玄関が非常に寒ければ、家の中に大きな温度差ができます。

そのため、既存の玄関ドアの断熱性能が低く、玄関の寒さが強い住宅では、玄関ドアの交換もできるだけおすすめしています。

窓だけを新しくして終わりではなく、玄関を含めた開口部全体を見ておくことも大切です。


北側だけ結露する家もある


部分断熱では、「寒い場所がどこに残るのか」も確認する必要があります。

実際に、

「北側の窓の結露がひどい」

という相談を受けた住宅がありました。

その住宅は南側の日当たりがかなり良く、南側の部屋は暖まりやすい一方で、北側は温度が下がりやすい環境でした。 現地の状況から、暖かい室内の空気が北側の冷えた窓付近で冷やされることが、結露の一因になっていると考えました。 そこで、南側だけではなく、北側の窓についても内窓の設置を検討しました。 結露は、室内の温度や湿度、窓などの表面温度など、複数の条件が関係して発生します。

そのため、

「暖かくしたい南側だけ断熱すればよい」

と単純には考えられません。

部分的に断熱性能を高める場合ほど、

「改修した場所」だけではなく、「その結果、寒い場所がどこに残るのか」

を見ることが大切です。


部分断熱は「ところどころ断熱する」という意味ではない


部分断熱という言葉から、

「予算に合わせて、できるところだけ断熱材を入れればよい」

と思われるかもしれません。

しかし、私たちは少し違う考え方をしています。

例えば、LDKを暖かくしたいのであれば、LDKの窓だけを見るのではなく、床・壁・天井などを含めて考える。

浴室を改善するのであれば、隣接する脱衣室まで含めて考える。

1階をこれからの生活の中心にするのであれば、1階の中でどこまでを快適な生活範囲にするのかを考える。

つまり、

「家全体か、部分か」

という二択ではありません。

「どの範囲をひとつの生活空間として整えるのか」

という考え方が重要です。

部分断熱だからといって、単に工事箇所をバラバラに選ぶのではなく、実際の暮らし方を見ながら断熱する範囲を決めていきます。


使わない場所まで同じ性能にする必要があるのか


既存住宅のリノベーションでは、この問いを一度考えてみてもよいと思います。

例えば、これから夫婦2人で主に1階だけを使う住宅。

その2階まで床・壁・天井・窓をすべて改修して、高い断熱性能にすることが本当に必要なのか。

もちろん、家全体をしっかり断熱したいという希望があり、予算にも余裕があれば、それもひとつの選択です。

しかし、

「2階はほとんど使わない」 「その費用をキッチンや収納に使いたい」 「将来の生活を1階で完結させたい」

のであれば、1階を優先する考え方もあります。

逆に、子育て世代で2階の寝室や子ども部屋を毎日使うのであれば、2階の窓なども含めて考える必要があります。

断熱リノベーションに、すべての人に共通するひとつの正解があるわけではありません。


「最高性能」ではなく「その人に必要な性能」を考える


断熱性能は、高いに越したことはありません。

しかし、住宅のリノベーションでは予算に限りがあります。

断熱だけではなく、

・耐震性 ・水まわり ・間取り ・収納 ・内装 ・設備 ・将来のメンテナンス

など、同時に考えなければならないことがたくさんあります。

すべてを最高性能にしようとすると、既存住宅であっても工事費は大きくなります。

だからこそ、

「この家には、どこまでの断熱性能が必要なのか」 「これから、どこで生活するのか」 「何に一番困っているのか」 「ほかの工事との予算配分をどうするのか」

を一緒に考えることが大切です。

あすなろ設計事務所では、家全体を一律に高性能化することを目的にはしていません。

・シニア世代であれば、これから生活する1階を中心に。

・子育て世代であれば、2階の寝室や子ども部屋も含めて。

・寒い脱衣室に困っているなら、水まわりを優先する。

・夏の暑さに困っているなら、天井や窓を確認する。

今ある住宅の状態と、これからの暮らし方、そして予算を見ながら、「どこまでやるのがその方にとってバランスが良いのか」を考える。

それが、既存住宅の断熱リノベーションでは大切だと考えています。


自分の家なら、どこまで断熱すればいい?


ここまでご紹介してきたように、断熱リノベーションには「ここまでやれば正解」というひとつの答えがあるわけではありません。

同じ築年数の住宅でも、

「冬の足元の寒さが気になる」 「脱衣室を暖かくしたい」 「夏の2階の暑さを改善したい」 「これからは1階だけで生活したい」

など、困っていることや、これからの暮らし方はそれぞれ違います。

さらに、今入っている断熱材の状態や窓の性能、今回どこまで解体するのかによっても、効率のよい改修方法は変わります。

あすなろ設計事務所では、今の住まいを確認しながら、

「どこを優先するのか」 「どこまで断熱するのか」 「そのためにどのくらい予算を使うのか」

を一緒に考え、その方の暮らしに合った断熱リノベーションをご提案しています。

「自分の家なら、どこまで断熱すればいいのだろう?」

そんな疑問がありましたら、お気軽にご相談ください。

藤枝のリノベーション展示場では、既存住宅を断熱リノベーションした空間を実際にご覧いただくこともできます。


参考資料

・国土交通省「部分断熱改修に向けた取組」生活空間など住宅の一部を対象とした断熱改修について、実証事例や改修効果がまとめられています。国土交通省公式ページ

・国土交通省「部分断熱改修の進め方と効果 ~実証事業で得られた知見~」部分断熱改修の範囲設定や改修前後の住環境などがまとめられています。国土交通省公式資料

・国土交通省「住宅省エネ2026キャンペーン」窓、ドア、躯体など、既存住宅の省エネ改修に関する情報が公開されています。住宅省エネ2026キャンペーン公式ページ

・国立研究開発法人 建築研究所「住宅のエネルギー消費性能の評価に関する技術情報」

住宅の外皮性能や断熱性能に関する技術資料が公開されています。







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