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窓と日射を考えるリノベーション④|断熱リノベーションは、限られた予算だからこそ優先順位を考える

4 時間前
読了時間: 9分

断熱リノベーションを行う戸建住宅の外観
リノベーション前|日差しや断熱状況を確認しながら改修計画を考える住宅

断熱リノベーションというと、

「窓も、壁も、床も、天井も、全部断熱した方がいいのでは?」

と思われるかもしれません。

もちろん、住宅全体の断熱性能を高めることができれば理想的です。

しかし、実際のリノベーションでは、耐震補強や設備交換、間取り変更、内装、屋根や外壁のメンテナンスなど、断熱以外にも予算を使う場所がたくさんあります。

そのため大切なのは、すべてを同じように改修することではなく、

「この家では、どこに予算を使うと暮らしが一番改善するのか」

を考えることです。

断熱等級などの数値も大切な判断材料ですが、既存住宅のリノベーションでは、数値を上げることだけを目的に工事範囲を広げるのではなく、実際の暑さ・寒さの改善と工事費のバランスを考えることが重要です。

今の住まいの状態、お客様が感じている暑さや寒さ、工事内容、ご予算を見ながら、必要なところから改善していきます。


断熱リノベーションで、まず考えるのは「窓」


限られた予算の中で断熱改修を考える場合、まず検討するのが窓です。

窓は外気の影響を受けやすく、冬の寒さや夏の日射の影響を感じやすい場所でもあります。

ただし、これまでのコラムでもご紹介したように、

「全部同じ窓に交換する」

という考え方ではありません。

方位や日当たり、使い方を見ながら、

・サッシを交換するのか ・カバー工法にするのか ・内窓にするのか ・日射取得型と日射遮蔽型のどちらを使うのか

を窓ごとに考えます。

窓の改修方法を整理したうえで、次に壁、床、天井へと考えを広げていきます。


壁は「解体するところ」を有効に使う


壁の断熱性能を高めるには、基本的に壁の中へ断熱材を入れる必要があります。

しかし、断熱材を入れるためだけに、状態のよい壁をすべて壊して復旧すると、工事費は大きくなります。

そこでリノベーションでは、間取り変更や耐震補強、設備工事などでもともと解体する壁を有効に使うことが重要です。

解体して壁の中が見える部分については、既存の断熱材をそのまま戻すのではなく、基本的に新しい断熱材へ交換します。

一方、工事で解体しない壁については、その部分だけ断熱材を交換するために壁を壊すことはあまり行いません。

もちろん、

「LDKだけはしっかり断熱したい」

など、お客様の希望があれば、断熱のために状態のよい壁を解体して施工することもあります。

大切なのは、断熱材を入れること自体を目的にするのではなく、その工事にどれくらい費用をかける価値があるかまで考えることです。



床と天井は、どちらが先とは限らない


窓と解体する壁を検討したあと、床と天井を考えます。

ここでは、決まった順番はありません。

冬の底冷えが強い住宅であれば、床を優先します。

反対に、

「2階が夏になるとかなり暑い」

という住宅では、天井側の断熱を優先することがあります。

つまり、

窓 → 解体する壁 → 床 → 天井

の場合もあれば、

窓 → 解体する壁 → 天井 → 床

の場合もあります。

お客様が感じている暑さや寒さを伺い、日当たりや窓、既存の断熱状況なども確認したうえで、どこを優先するかを決めます。

すでに住んでいる住宅であれば、実際に暮らしている方の体感はとても重要な情報です。

中古住宅を購入してリノベーションする場合には、これから住む方が暑さと寒さのどちらを気にされているのかも確認しながら計画します。



「冬寒い」と言われたら、まず住まい全体を見る


断熱について最も多いご相談は、やはり

「冬が寒い」

というものです。

次に多いのが2階の夏の暑さで、西日の暑さは立地条件によって大きく変わります。

冬の寒さが気になる場合も、いきなり断熱材を増やすわけではありません。

まず、


・LDKが家のどこに配置されているか ・どの方向から日が入るか ・窓がどれくらい大きいか ・床下に断熱材が入っているか

などを確認します。

例えば、南から冬の日差しがしっかり入るLDKと、日当たりの少ないLDKでは、同じ断熱工事をしても感じ方は変わります。

「寒い」という一言だけで工法を決めるのではなく、なぜ寒く感じているのかを整理することが最初の一歩です。



約10万円で、2階の暑さ対策ができたケース


断熱改修は、大掛かりな工事ほど費用対効果が高いとは限りません。

実際に、リノベーション予算に約10万円の余力があり、2階の暑さを少しでも改善したいという住宅がありました。

この住宅では天井を壊さず、点検口から天井裏へ入り、上から断熱材を敷いていきました。

天井の解体も、内装の復旧も必要ありません。

必要なのは、主に断熱材の材料費と大工さんの作業費です。

このように、天井裏へ入ることができ、解体・復旧工事が不要な住宅では、比較的少ない追加費用で暑さの緩和を図れることがあります。

点検口がない場合でも、押し入れの天井を一時的に外して天井裏へ入れるケースがあります。

一方、天井裏へ入ること自体が難しい住宅では、無理に天井をすべて解体するのではなく、屋根塗装のタイミングで遮熱塗装を検討するなど、別の方法を考えることもあります。

工事しやすい条件を利用することも、費用対効果を高める大切なポイントです。

※天井裏の形状や進入できる場所の有無、施工面積などによって、施工方法や費用は変わります。



すでにある断熱材は、使えるところを活かす


ある住宅では、窓はすべて改善しました。

壁については、リノベーション工事で解体した部分のみ断熱材を入れ替えました。

床と天井には既存の断熱材が入っていましたが、その部分を交換するには、床や天井を新たに解体する必要がありました。

そこで、床と天井は既存のものを活かし、新たな工事は行いませんでした。

解体した部分で見える断熱材は基本的に交換しますが、断熱材を交換するためだけに健全な仕上げを壊すかどうかは別の判断です。

使えるものは使いながら、必要なところへ予算を集中させる。

これもリノベーションならではの考え方です。



底冷えが強ければ、床を優先することもある


別の住宅では、冬の床の冷たさが大きな悩みでした。

そこでLDKの床には新しく断熱材を入れ、窓は内窓とサッシ交換を組み合わせて改善しました。

一方、夏の天井からの暑さはそれほど気になっていなかったため、天井は既存の状態を利用しました。

もし最初から、

「窓も壁も床も天井も、すべて断熱する」

と決めてしまえば、天井にも予算を使うことになります。

しかし、そのお客様が困っていたのは天井ではありません。

困っているところへ、より多く予算を使う。

その方が、実際の暮らしでは改善を感じやすいことがあります。



性能を上げることで、使い勝手を落とさない


断熱性能を上げられるなら、何でも施工した方がよいというわけではありません。

現在打合せ中の住宅には、少し狭い勝手口があります。

ここをカバー工法で新しい建具へ交換すると、既存枠の内側に新しい枠が付くため、さらに通れる幅が狭くなります。

サッシごと交換する方法もありますが、その場合は内外の壁を解体する必要があります。

外壁はALC仕上げのため、交換すると工事範囲が広がり、費用も大きくなります。

しかも、この勝手口は外へすぐ出ることができ、暮らしの中ではとても便利な場所です。

さらに、この勝手口は北側にあり、夏の強い日差しによる暑さ対策は必要ありません。冬の冷気をどう抑えるかが主な課題でした。

そこで、サッシそのものを交換するのではなく、今の使いやすさを残す方向で考えています。

勝手口の室内側にはハニカムサーモスクリーンを設置し、さらに隙間風を抑えるためのガイドレールを組み合わせる方法をご提案しています。

暖かい時期や日中はスクリーンを上げ、勝手口としての使いやすさを優先します。

冬の寒い時期や夜間にはスクリーンを下ろし、冷気を抑える使い方を想定しています。

ただし、断熱性の高いスクリーンを閉めた状態では、既存の勝手口側に結露が生じる場合があります。

そのため、実際の結露の状態を確認しながら、日中はスクリーンを開けるなど、製品だけでなく使い方についてもあわせてお伝えすることが大切です。

サッシ交換によって出入口を狭くしたり、ALC外壁まで壊して大きな工事費をかけたりするのではなく、

今の使い勝手を残しながら、製品と暮らし方の工夫を組み合わせて寒さを改善する。

リノベーションでは、「交換する・しない」の二択ではなく、その家に合った別の方法を組み合わせることも大切です。



断熱等級などの数字も大切。ただし、数字だけで決めない


断熱等級やUA値など、住宅の性能を数値で確認することには意味があります。

ただ、既存住宅のリノベーションで一定の断熱等級を目指そうとすると、壁や床、天井など、外皮の広い範囲を改善する必要が出ることがあります。

そのため、計算上の数字を上げることだけを目的に、工事範囲を広げるわけではありません。

例えば、壁や天井を壊せば、さらに性能を高められる住宅もあります。

しかし、そのために大きな解体・復旧費が必要になるのであれば、その予算を耐震補強や設備、間取り改善など、住宅全体へ使った方がよい場合もあります。

もちろん、費用対効果が高く、ご予算にも余裕があれば、さらに断熱性能を高めることをご提案します。

大切にしているのは、

「計算上の数字」だけではなく、お客様が実際の暮らしで感じる快適さと、工事費のバランスです。

その家、その暮らし、その予算に合ったところまで性能を高めていく。

それが、既存住宅の断熱リノベーションでは重要だと考えています。



限られた予算だからこそ、優先順位を考える


断熱リノベーションでは、

窓も、壁も、床も、天井も。

できるだけ性能を高める方法はいくらでもあります。

しかし、住宅全体を考えれば、耐震補強も設備交換も、屋根や外壁のメンテナンスも必要です。

だからこそ、

どこまで性能を上げられるかではなく、どこに予算を使えば暮らしが最もよくなるのか。

という視点が大切だと考えています。

窓は改善する。 工事で開ける壁は断熱する。 底冷えが強ければ床へ。 2階の暑さが強ければ天井へ。 既存のものを活かせる部分は活かす。 費用対効果が低いところや、使い勝手が悪くなるところは、別の方法も検討する。

住宅によって、その答えは変わります。

全部やることではなく、その家に必要なことを選ぶこと。

それが、限られた予算の中で断熱リノベーションを考えるときに大切にしていることです。




ご相談について


断熱リノベーションは、住宅の状態や現在の暮らし、ご予算によって優先する場所が変わります。

「窓だけでも意味がある?」 「床と天井なら、どちらを優先した方がいい?」 「今ある断熱材は使える?」

と迷われている場合は、住宅全体を見ながら一緒に考えていきます。




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