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木造住宅の地震対策②|耐震に制振をプラスする理由

4 時間前
読了時間: 6分

柱や梁などの木造構造が見える室内
間取り変更と合わせて耐震工事中の様子

繰り返す地震と共振への備え、制振装置の役割と選び方

「耐震補強をすれば、地震への備えは十分なのでしょうか?」

古い住宅のリノベーションを考えるとき、耐震性は気になるところだと思います。

地震に強い家にするためには、柱や壁を補強することが大切です。

でも、建物を強くすることだけでなく、地震の揺れによる負担を減らす方法もあります。

それが「制振」です。

今回は、耐震と制振の違いや、あすなろ設計事務所が古い住宅にも制振装置をおすすめしている理由についてお話しします。



「耐震」と「制振」は何が違う?

耐震は、柱や梁、筋交い、耐力壁などを使って建物を強くし、地震の力に耐えられるようにすることです。

一方、制振は、建物に取り付けたダンパーなどで、揺れのエネルギーを吸収する仕組みです。

身近なものでは、自動車にもダンパーが使われています。

段差を乗り越えたあと、車体がいつまでも上下に揺れ続けないのは、ダンパーが揺れを抑える働きをしているからです。

住宅の制振装置も、揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形や損傷を抑えることを目的としています。


木造住宅の耐震構造と制振装置を組み合わせた構造の違いを示す図
耐震と制振の役割の比較

耐震と制振は、どちらか一方を選ぶものではありません。

まずは必要な耐震性能を確保すること。そのうえで、さらに揺れによる負担を減らす方法として、制振装置を組み合わせます。

建物の強さを確保することと、揺れによる負担を減らすこと。その両方を考えるのが「耐震+制振」です。



繰り返す地震と「共振」への備え

地震の揺れには、もう一つ知っておきたいことがあります。

それが「共振」です。

例えば、ブランコをこぐとき、揺れに合わせてタイミングよく力を加えると、だんだん大きく揺れるようになります。

実は、建物にもそれぞれ揺れやすい周期があります。

地震の揺れと建物の揺れやすい周期が重なると、ブランコのように揺れが大きくなることがあります。


木造住宅と鉄筋コンクリート造などの建物の揺れやすい周期を比較した図
建物の固有周期と共振の仕組み

また、地震は一度だけとは限りません。

2016年の熊本地震では、大きな揺れが繰り返し発生しました。

最初の地震で建物が傷み、その状態で次の大きな揺れを受けることも考えられます。

築40年・50年の住宅では、耐震補強をしても、大きな地震の後に修繕が必要になることはあります。

私たちが耐震補強でまず大切にしているのは、建物を無傷に保つことではなく、倒壊の危険を減らし、家族の命を守ることです。

制振装置には、揺れのエネルギーを吸収し、建物の変形や損傷を抑える効果が期待できます。

繰り返す大きな地震に対しても、建物にかかる負担を少しでも減らし、倒壊の危険を抑えたい。

それが、古い住宅の耐震補強に制振装置を組み合わせている理由の一つです。

ただし、制振装置を付ければすべての揺れを防げるわけではありません。効果は建物の構造や装置の配置、地震の揺れ方によって異なります。


藤枝リノベーション展示場に設置された建物の共振実験模型
シンプルでもわかりやすい共振の実験模型

藤枝リノベーション展示場には、この共振の仕組みをわかりやすく見られる実験模型があります。

言葉だけでは少し難しいのですが、模型を動かしてみると、揺れの性質を身近に感じていただけると思います。



築年数と建物の状態から考える制振装置

私が制振装置に関心を持つようになったきっかけの一つは、静岡県地震防災センターで震度7の揺れを体験したことでした。

実際に激しい揺れを体で感じて、地震の力は一方向からだけではないことを実感しました。

それまで以上に、建物を強くすることに加えて、揺れによる負担を減らす方法も取り入れたいと考えるようになりました。

そこで探し始めたのが、多方向の揺れに対応できる制振装置です。

いくつかの仕組みを調べるなかで着目したのが、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(クロスタイプ)」でした。

この装置は、オイルダンパーで揺れのエネルギーを吸収します。取付部分にはクロスピンという仕組みがあり、多方向からの揺れにも対応できるよう工夫されています。


木造住宅の構造部分に取り付けられたMER SYSTEMの制振ダンパー
MER SYSTEMクロスタイプの設置状況

あすなろ設計事務所では、特に築40年以上の木造住宅で、制振装置を積極的におすすめしています。

理由の一つは、昔の住宅と現在の住宅では、建築当時の構造基準に違いがあるからです。

例えば、2000年以前の木造住宅では、柱と梁・土台をつなぐ金物や、耐力壁の配置などについて、現在とは異なる規定のもとで建てられています。

そのため、築30年台の住宅でも、建物の状態によっては制振装置をご提案することがあります。

また、築年数が経過した住宅では、雨漏りやシロアリによる傷み、基礎や接合部の状態なども気になるところです。

もちろん、古いから必ず傷んでいるわけではありません。

大切なのは、その家の状態をきちんと調べて、何が必要なのかを考えることです。

接合部や基礎などに弱点があれば、制振装置だけで解決できるものではありません。

必要な補修や耐震補強を考えたうえで、繰り返す揺れへの備えをさらに充実させる方法として、制振装置をご提案しています。

なお、古民家などの伝統構法の建物は、一般的な木造住宅とは揺れ方や構造の特徴が異なります。そうした特徴も踏まえて、制振装置が適しているかを個別に判断しています。



あすなろが考える「耐震+制振」の選び方

制振装置は、すべての住宅に必ず必要というものではありません。

あすなろ設計事務所では、建物の状態を調べ、耐震診断によって強さや弱点を確認します。

必要な耐震補強を考えたうえで、制振装置を採用する場合は、診断結果をメーカーに渡して、設置する位置や本数を検討してもらいます。

MER SYSTEMでは、限界耐力計算という方法で、装置を付ける前と後の建物の揺れ方を比較し、期待できる効果を検討できます。

難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、ただ装置を付けるのではなく、その家に合った配置を考えるということです。

また、リノベーションで壁や天井を改修するタイミングは、普段は見えない構造部分を確認できる機会でもあります。

完成してからでは工事が難しくなる場所もあるため、この機会に制振装置について考えてみるのもよいと思います。

とはいえ、リノベーションには予算があります。

耐震や制振だけでなく、断熱性能を高めたり、間取りを使いやすくしたり、設備を新しくしたりと、やりたいことはたくさんあるはずです。

だからこそ、何でも取り入れるのではなく、その家に必要なものを一緒に考えたいと思っています。

まずは大きな地震から家族の命を守ること。そして、これからの暮らしをより快適に、長く楽しめる住まいにすること。

そのために必要な耐震性能を確保し、さらに地震による建物への負担を減らす選択肢として「制振」を考えています。



藤枝リノベーション展示場で実際に設置されている制振装置
藤枝展示場に設置された実物の制振装置


制振の仕組みを、実験模型で確かめてみませんか?

藤枝リノベーション展示場では、共振実験模型や、実際に取り付けられた制振装置をご覧いただけます。

「耐震と制振って、何が違うの?」

「うちの家にも制振装置は必要なの?」

そんな疑問があれば、ぜひ見学の際にお聞かせください。

築41年の木造住宅をリノベーションした展示場で、実物を見ながらご説明いたします。



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